老後の生活費を確かめる4つのステップ
ここまで見てきたように、年金額は過去の働き方や保険料の納め方によって大きく変わります。生活保護を受けている人の年金が少ないのは、本人の努力だけでは説明できない事情も重なった結果といえるでしょう。
自分や家族の老後に備えるうえで大切なのは、まず現状を数字でつかむことです。50代後半から60代の人は、次の順番で確かめてみてください。
- 年金の見込み額を知る:ねんきん定期便やねんきんネットで、65歳から受け取れる年金のおおよその額を確認します。
- 手元の資金を書き出す:退職金の見込みや預貯金のほか、加入したまま忘れている貯蓄型の保険がないかも見直します。
- 老後も続く支出を見積もる:家賃や住宅ローンの残り、食費や光熱費など、毎月かかる生活費を洗い出します。
- 不足額を計算する:「毎月の生活費-年金」で月々の不足を出し、老後の期間に必要な額を逆算します。
不足が見えたときの手立て
不足があると分かっても、60代から手元の資金をまとめて値動きの大きい商品に回すのは避けたいところです。まずは働く期間を延ばし、厚生年金に入る期間を長くすることを考えましょう。
働いて収入を得られる間は、年金の受け取りを遅らせる「繰下げ受給」も選べます。1か月遅らせるごとに年金は0.7%増え、70歳まで遅らせれば42%増えた額を一生受け取れます。
ただし、年金が増えると税金や社会保険料の負担も増える場合があります。余裕資金の範囲でiDeCoやNISAを使う方法も含め、家計全体で考えることが大切です。
【2026年10月から】生活保護の特例加算が月2500円に
生活保護費のうち、食費や光熱費など日々の暮らしに充てられるのが「生活扶助」です。この生活扶助の基準額が、2026年10月に引き上げられました。
特例加算は1000円の引き上げ
生活扶助には、基準額に上乗せされる「特例加算」があります。上野大臣は2025年12月24日の会見で、特例加算を1000円引き上げて1人あたり月2500円とし、2026年10月から1年限りの措置として実施すると説明しました。
現在の厚生労働省告示「生活保護法による保護の基準」にも、世帯人員1人につき月2500円を加えると定められています。単身なら月2500円、2人世帯なら月5000円が上乗せされる計算です。
単身高齢者の生活扶助の基準額
では、ひとり暮らしの高齢者の生活扶助は、2026年10月からいくらになるのでしょうか。告示の基準額をもとに、級地が最も高い1級地-1と最も低い3級地-2で試算しました。
単身高齢者の生活扶助の基準額は、70〜74歳なら1級地-1で月7万6750円、3級地-2で月6万8850円
- 65〜69歳:1級地-1は月7万6880円、3級地-2は月6万8850円
- 70〜74歳:1級地-1は月7万6750円、3級地-2は月6万8850円
- 75歳以上:1級地-1は月7万1900円、3級地-2は月6万3400円
試算では、第1類費(年齢別)と第2類費(世帯人員別)、経過的加算額を合わせ、10円未満を切り上げたうえで特例加算の2500円を足しています。冬季加算や住宅扶助、医療扶助などは含めていません。
年金月6万円なら差額はどのくらいか
たとえば70歳のひとり暮らしで、年金が月6万円の場合を考えてみます。生活扶助の基準額との差は、1級地-1なら月1万6750円、3級地-2なら月8850円です。
賃貸住宅に住んでいる場合は、家賃に充てる住宅扶助が地域ごとの上限の範囲で加わるため、最低生活費はさらに高くなります。実際に受け取れる額は、世帯の状況や収入の認定をふまえて福祉事務所が決めるので、あくまで目安として見てください。
まとめにかえて
年金を受け取っていても、収入が最低生活費に届かなければ、足りない分を生活保護で補えます。生活保護を受けている年金受給者の平均年金は年65万7000円で、8割超が年100万円未満でした。
ひとり暮らしの人や年金の少ない女性ほど、年金だけで暮らすのは難しくなりがちです。2026年10月からは特例加算が月2500円となり、単身高齢者の生活扶助は級地によって月6万3400円から7万6880円の水準になっています。
「年金があるから無理だろう」と自分で判断せず、暮らしが立ち行かないと感じたら、住んでいる地域の福祉事務所の生活保護担当に相談してみてください。福祉事務所のない町村では、町村役場でも申請を受け付けています。
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在は株式会社モニクルリサーチが運営する複数のWebメディアで年金・貯蓄・退職金等の情報を発信。