「ひとり暮らしの母の年金は月6万円ほどです。家賃と光熱費を払うと手元にほとんど残らないようですが、年金をもらっていると生活保護は申請できないのでしょうか」
年金だけでは暮らしが厳しい親を持つ人や、自分の老後に不安を感じている人から、このような疑問の声が届くことが多いです。年金と生活保護は、どちらか一方しか選べないものだと考えている人は少なくありません。
実際には、年金を受け取りながら生活保護を受けている高齢者は約48万6000人います。厚生労働省の「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年」によると、その人たちが受け取る年金は平均で年65万7000円、月に直すと5万円台にとどまっていました。
この記事では、年金と生活保護を両方受け取れる仕組みと、生活保護を受けている人の年金額の実態をデータで確かめます。2026年10月から引き上げられた生活扶助の「特例加算」をふまえ、単身高齢者の生活扶助の基準額も試算しました。
年金を受け取りながら生活保護は受けられる
「年金があると生活保護は受けられない」という話を耳にしたことがある人もいるでしょう。ここでは、生活保護の支給額がどのように決まるのかを見ていきます。
足りない分を補う仕組み
生活保護では、国が定める「最低生活費」と世帯の収入を比べます。厚生労働省の「生活保護制度」のページでは、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されると説明されています。
年金も、この収入のひとつとして数えられます。たとえば最低生活費が月13万円の世帯で年金が月6万円なら、差し引きの7万円が生活保護費として支給される計算です。
この考え方は、生活保護法の「補足性の原理」にもとづいています。年金や手当などほかの制度で受け取れるお金をまず活用し、それでも足りない部分を生活保護で補うという順番なのです。
受け取れる合計は最低生活費まで
年金と生活保護を両方受け取れるといっても、合計額が最低生活費を上回ることはありません。年金が増えればその分だけ保護費は減るため、いわゆる「二重取り」にはならない仕組みです。
2026年度の老齢基礎年金は、40年間保険料を納めた満額でも月7万608円です。住む地域や家族の人数によって最低生活費は違いますが、基礎年金だけで暮らしている人は、収入が最低生活費に届かないこともあり得ます。
※ 老齢基礎年金の満額は1956年(昭和31年)4月2日以後生まれの人の額。1956年(昭和31年)4月1日以前生まれの人は月7万408円
ただし、収入が少ないだけで生活保護を受けられるわけではありません。預貯金や使っていない土地・家屋などの資産、働く能力、親族からの援助なども含めて、福祉事務所が世帯ごとに判断します。
生活保護を受ける年金受給者の平均年金は「月5万円台」
では、年金を受け取りながら生活保護を受けている人は、実際にいくらの年金を受け取っているのでしょうか。厚生労働省の「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年」から、本人の公的年金の年額を比べてみます。
生活保護を受けている年金受給者の平均年金額は年65万7000円で、受給者全体の半分以下
- 受給者全体の平均年金額:年151万8000円(月約12万6500円)
- 生活保護を受けている人の平均年金額:年65万7000円(月約5万4800円)
生活保護を受けている人の年金は、受給者全体の平均の4割ほどです。基礎年金の満額である月7万608円にも届いていません。
8割超が年100万円未満
同じ調査では、生活保護を受けている人を年金額の階級ごとに数えています。年金の多い人と少ない人の分布を見ると、低い額に集中していることが分かります。
生活保護を受けている年金受給者の65.4%は、年金が年75万円未満
- 年25万円未満:4万300人
- 年25万〜50万円:15万2300人
- 年50万〜75万円:12万5400人
- 年75万〜100万円:9万3700人
- 年100万〜125万円:3万7000人
- 年125万〜150万円:2万3500人
- 年150万円以上:1万3800人
年75万円未満、つまり月6万2500円未満の人が65.4%を占めています。年100万円未満まで広げると84.7%で、生活保護を受けている人の大半は、基礎年金の満額前後かそれより少ない年金で暮らしているのです。
※ 割合は人数(千人単位)をもとに編集部が算出
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在は株式会社モニクルリサーチが運営する複数のWebメディアで年金・貯蓄・退職金等の情報を発信。