東京都大田区は2026年9月18日に更新したページで、令和8年度の介護保険料に限った算定の特例措置を案内しています。令和7年度税制改正で給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に上がったことを受け、住民税が非課税でも介護保険料では課税とみなす場合がある、という内容です。
住民税非課税世帯は負担が軽くなると聞いても、実際に何がどれだけ変わるのでしょうか。年金が少し増えて課税になったら、どこにいくら影響が出るのでしょうか。
この記事では、東京都大田区の介護保険料と、厚生労働省の高額療養費・高額介護サービス費の資料で、非課税と課税の違いを並べます。65歳以上の単身で、年金が非課税の線をわずかに超えた場合の負担の差も試算しました。
非課税と課税で介護保険料はいくら違う?大田区の単身で年5万1480円と8万7120円
65歳以上の介護保険料は、本人と世帯の住民税の課税状況と所得で段階が決まります。大田区の第9期(令和6年度から令和8年度)の基準額は年7万9200円で、段階ごとに倍率を掛けた額になります。
世帯全員が非課税で、年金収入とその他の合計所得の合計が120万円を超える人は第3段階で年5万1480円です。本人が課税され、合計所得金額が120万円未満の人は第6段階で年8万7120円になります。
住民税が非課税か課税かで、介護保険料のほか医療・介護の自己負担の上限も分かれます
- 【介護保険料(大田区・年額)】非課税(第3段階)5万1480円、課税(第6段階)8万7120円
- 【住民税の均等割(年額)】非課税0円、課税5000円
- 【高額療養費・70歳以上(月額)】非課税2万5700円、課税(年収約370万円まで)6万1500円
- 【高額療養費・70歳以上の外来(月額)】非課税1万1000円、課税(年収約370万円まで)2万2000円
- 【高額介護サービス費(月額)】非課税2万4600円、課税(年収約770万円まで)4万4400円
介護保険料の差は年3万5640円です。大田区の資料では、第1段階から第3段階は公費による軽減が続いているとされています。
※試算の前提:介護保険料は大田区の第9期(令和8年度)の額です。住民税の均等割は大田区の区民税3000円、都民税1000円、森林環境税1000円の合計です。高額療養費は令和8年8月診療分からの額で、課税の区分は年収約370万円までの世帯の上限です。
医療と介護の自己負担の上限は?70歳以上なら月2万5700円と6万1500円で約2.4倍の差
厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」によると、70歳以上の住民税非課税の区分の月の上限額は2万5700円です。課税で年収約370万円までの区分は6万1500円で、差は月3万5800円になります。
8月からは年間の上限も新しく設けられました。70歳以上の非課税の区分は年29万円、課税で年収約370万円までの区分は年53万円です。70歳未満では、非課税の区分の月の上限は3万6900円です。
介護サービスの自己負担にも同じような上限があります。大阪府の「介護保険制度について」では、世帯の全員が市町村民税を課税されていない場合の高額介護サービス費の上限は月2万4600円と案内されています。厚生労働省の資料では、一般的な所得の人の上限は月4万4400円です。
前年の合計所得金額と公的年金等収入額の合計が82万6500円以下の人などは、個人の上限が月1万5000円になります。介護保険施設の食費・居住費の軽減も、2026年8月1日から利用者負担段階の基準額の一部が改められています。
世帯に課税の人が1人でもいれば?介護保険料も上限額も「世帯全員が非課税」かで区分が変わる
ここまでの非課税の区分の多くは、本人だけでなく世帯全員が住民税非課税であることが条件です。同じ世帯に住民税を課税されている家族がいると、本人が非課税でも区分が変わります。
- 【介護保険料(大田区)】本人非課税で世帯に課税者がいると第4段階(年6万3360円)か第5段階(年7万9200円)
- 【高額療養費】70歳以上の非課税の区分は、世帯の課税状況で判定される
- 【高額介護サービス費】世帯の全員が非課税の場合に月2万4600円の上限
たとえば、年金で暮らす親が働く子と同じ世帯にいる場合は、親が非課税でも、介護保険料は第3段階ではなく第4段階か第5段階になります。世帯を分けているかどうかも、区分を確かめるときの手がかりになります。
年金155万円と156万円で負担はいくら違う?介護保険料と住民税で年4万640円
東京23区で65歳以上の単身の人は、年金収入だけなら155万円以下で住民税が非課税になる目安です。江戸川区の資料にも、年金収入のみの65歳以上の単身者で年収155万円以下という例が示されています。
この線の前後で、大田区に住む単身の人の介護保険料と住民税を試算しました。
年金が1万円多い156万円では、介護保険料と住民税の合計が年4万640円多くなります
- 【年金155万円(非課税)】介護保険料5万1480円、住民税0円、合計5万1480円
- 【年金156万円(均等割のみ課税)】介護保険料8万7120円、住民税5000円、合計9万2120円
年金156万円では、合計所得金額が46万円となり、非課税の基準45万円を1万円超えます。住民税は均等割だけがかかり、所得割は社会保険料控除などを差し引くと0円になる計算です。
差の大部分は介護保険料で、段階が第3段階から第6段階に変わることによるものです。一方、この試算では国民健康保険料や後期高齢者医療保険料は含めていません。
※試算の前提:65歳以上・単身・収入は公的年金のみ。公的年金等控除は110万円、均等割の非課税基準は合計所得金額45万円以下(1級地)としています。所得割は、所得から基礎控除43万円と介護保険料を差し引いて計算しました。
非課税の判定は前年の所得で決まり、区分が切り替わるのは年度ごと
医療保険の制度改正を取材していた経験からお伝えすると、こうした区分の数字は「いつの所得で、誰の課税状況を見るか」を先に確かめると読みやすくなります。
住民税は前年1年間の所得で決まります。2026年度の住民税は2025年中の所得、2027年度の住民税は2026年中の所得が基準です。介護保険料も、前年の所得と、その年度の住民税の課税状況で段階が決まります。
高額療養費の年間上限は、8月から翌年7月までを1年として数えます。区分が切り替わる時期は制度によって違うため、通知が届いたら、どの年の所得が反映されたものかを見ておくと安心です。
冒頭で触れた大田区の特例措置は、令和7年中の給与収入が55万1000円以上190万円未満の人が本人や同じ世帯にいる場合が対象です。区の例では、給与収入105万円の人は令和8年度の区民税が非課税でも、介護保険料は課税とみなされ、年8万7120円(第6段階)になります。
この扱いは令和8年度分に限られ、令和7年度の区民税が非課税だった人には適用されないとされています。給与収入がある世帯は、住民税の通知と介護保険料の通知で扱いが分かれることもあるため、両方を見比べておくと安心です。
住民税非課税で変わるのは介護保険料と自己負担の上限、世帯の課税状況から確かめる
住民税非課税になると、大田区の65歳以上の単身なら介護保険料が年3万5640円低くなり、高額療養費や高額介護サービス費の上限も低い区分になります。多くは世帯全員が非課税であることが条件です。
年金が非課税の線の近くにある人は、介護保険料の通知や保険証に記載される区分で、いまの扱いを確かめておきましょう。分からないときは、お住まいの市区町村の税務課や介護保険課に問い合わせると確実です。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。住民税の非課税基準や介護保険料の段階・金額は市区町村によって異なります。実際の金額は、お住まいの市区町村でご確認ください。
元厚労省担当の専門紙の新聞記者。公的社会保障(年金・医療・介護)やNISA・iDeCoを横断分析。難解な一次データを生活者視点に翻訳し、知っておきたい家計防衛の知見と、安全で実用的な情報を提供。