国民健康保険の傷病手当金は条例しだい
勤務先の健康保険を外れて国民健康保険に入ると、休んだときの扱いが変わります。筆者が元公務員として国民健康保険を担当していた頃も、会社を辞めて加入の手続きに来た人から「休んでいる間のお金はこちらから出ますか」と聞かれることがありました。
法律で必ず出る給付ではない
国民健康保険法第58条第2項では、市町村と国民健康保険組合は、条例や規約の定めるところにより傷病手当金の支給などを「行うことができる」とされています。勤務先の健康保険のように、法律で支給が決まっている給付ではないのです。
そのため、国民健康保険に加入している自営業やフリーランスの人は、病気で休んだ間の収入を自分で備える必要があります。加入している国民健康保険に独自の給付があるかは、市区町村の担当窓口で確かめられます。
傷病手当金も扶養の収入に数える
先に触れたとおり、被扶養者の収入には傷病手当金や出産手当金も含まれます。退職後に家族の扶養に入ることを考えている人は、受け取っている傷病手当金の見込み額も含めて、130万円などの基準を確かめておきましょう。
傷病手当金や出産手当金など非課税の収入がある場合、扶養の手続きでは受け取った金額のわかる通知書などの写しが別に必要になります。
国民健康保険は産前産後の保険料が免除される
国民健康保険には出産手当金がない一方で、2024年1月から、出産する被保険者の保険料を産前産後の期間について免除するしくみが始まりました。筆者が国民健康保険を担当していた頃にはなかった制度なので、扶養を外れて国民健康保険に入る人は確かめておきたい点です。
免除分は国と自治体が負担
厚生労働省の資料では、産前産後期間の国民健康保険料(税)を免除し、免除した分を国・都道府県・市町村で負担するとしています。免除した分を、ほかの加入者の保険料ではなく公費でまかなう形です。
勤務先の健康保険でも、産前産後休業の間は申し出により保険料が免除されます。国民健康保険の免除は、休業の有無ではなく出産そのものが対象になる点が違います。
免除の期間は4か月
免除の期間や手続きは、市区町村の案内で確かめられます。たとえば世田谷区では、出産(予定)日の属する月の前月から翌々月までの4か月間で、多胎妊娠の場合は3か月前から翌々月までの6か月間が対象です。
届出は出産予定日の6か月前からでき、出産後でも受け付けています。妊娠85日以上の出産が対象で、死産や流産、早産なども含まれます。
出産のときの支えの形が違う
勤務先の健康保険では、休んで給与が出ない期間に出産手当金が支給されます。国民健康保険では給付ではなく、保険料の負担を軽くする形で支えるのです。
扶養の内側で働くか勤務先の健康保険に入るかで迷ったら、勤務先の担当部署と市区町村の国民健康保険の窓口の両方で、自分の場合の保険料と給付を聞いてみると比べやすくなります。
まとめにかえて
2026年10月に、パートなどが勤務先の健康保険に入る要件から月額8.8万円の賃金要件がなくなりました。勤務先の健康保険に入ると保険料がかかる一方、標準報酬月額11万円なら1日2447円の傷病手当金や、98日で23万9806円の出産手当金の対象になります。
協会けんぽの調査では、2025年10月の傷病手当金は1件あたり平均19万3493円で、原因の41.27%が精神及び行動の障害でした。冒頭の声のように10月から勤務先の健康保険に入った人は、手取りの減り方だけでなく、休んだときに受け取れる額もあわせて確かめておきましょう。
自分の標準報酬月額は、給与明細の健康保険料の額や勤務先の担当部署で確かめられます。国民健康保険の給付や保険料の免除については、住んでいる市区町村の窓口に問い合わせてみてください。
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在は株式会社モニクルリサーチが運営する複数のWebメディアで年金・貯蓄・退職金等の情報を発信。