年金が月7万円の一人暮らしで、生活保護費はいくらになるのでしょうか。令和8年10月から、生活扶助に上乗せされる特例加算が、1人あたり月1500円から2500円に引き上げられました。
生活保護費は、国が定める最低生活費から、年金などの収入を引いた差額で決まります。最低生活費は、お住まいの地域の級地によって違うため、年金が同じ月7万円でも、受け取れる額は地域で変わります。
ここでは、厚生労働省の令和8年度の基準と被保護者調査をもとに、65歳の単身世帯の生活扶助の額、年金との差額の試算、受給世帯の状況を整理します。
※編集部:本記事は、厚生労働省「令和8年度生活扶助基準の見直しについて」(令和8年2月27日の社会保障審議会生活保護基準部会資料)、同省の生活保護制度のページ、被保護者調査(令和8年7月分概数、令和8年10月7日公表)に基づく整理です。実際の保護費は、世帯の状況によって異なるため、福祉事務所で確認してください。
令和8年10月から特例加算は月1500円から2500円に、1年間の措置
厚生労働省の資料によると、生活扶助の基準は、令和7年度から8年度の2年間、臨時的・特例的な措置として、1人あたり月額の特例加算が上乗せされています。令和7年度は月1500円でした。
令和8年度は、令和8年10月から1年間、特例加算を1000円引き上げ、1人あたり月2500円とする見直しです。入院患者と介護施設の入所者は、食費や光熱費などが現物で給付されているため、加算額は月1000円のままです。
特例加算をつけても、従前の基準額より下がる世帯には、従前の基準額が保障されます。令和9年度以降の基準は、令和9年度の予算編成の中で、定期検証を1年前倒しして検討するとされています。
65歳の単身の生活扶助は、1級地-1で月7万6880円、3級地-2で月6万8850円
生活保護の基準は、市区町村ごとに、1級地-1から3級地-2までの6区分に分かれています。同じ65歳の単身世帯でも、物価などの地域差を反映して、級地ごとに生活扶助の額が違います。
厚生労働省の資料から、65歳の単身世帯の生活扶助基準額を、令和7年度基準(令和7年10月〜令和8年9月)と令和8年度基準(令和8年10月〜令和9年9月)で並べると、次の表のとおりです。
令和8年10月から生活保護の生活扶助はいくら変わる?65歳の一人暮らしで級地別に令和7年度基準と比べた月額の早見表
65歳の単身世帯の生活扶助基準額(令和7年度基準から令和8年度基準)
- 1級地-1:7万6880円から7万6880円(0円)
- 2級地-1:7万2490円から7万3490円(プラス1000円)
- 3級地-2:6万7850円から6万8850円(プラス1000円)
1級地-1だけ、令和7年度と令和8年度の額が同じです。令和4年の検証結果を反映した額7万4250円に、特例加算2500円と経過的加算130円を足すと7万6880円で、従前額と並ぶ水準になるためと考えられます。
2級地-1と3級地-2は、特例加算が1500円から2500円に増えた分の1000円が、そのまま基準額に反映されています。級地の区分は、市区町村ごとに厚生労働省の級地一覧で確認できます。
年金月7万円の一人暮らしは、生活扶助だけなら1級地-1で月6880円の差額
生活保護は、最低生活費から収入を引いた差額が、保護費として支給されます。厚生労働省は、この収入の例として、年金や児童扶養手当などを挙げています。
65歳で、年金以外の収入がなく、年金が月7万円の場合を考えます。生活扶助だけで比べると、1級地-1は7万6880円から7万円を引いた月6880円、2級地-1は7万3490円から7万円を引いた月3490円です。
3級地-2は、生活扶助が6万8850円で、年金の7万円が1150円上回ります。生活扶助だけの比較では、差額は出ません。ただし、これは生活扶助だけの比較で、家賃などが加わると結果が変わります。
家賃がある場合は住宅扶助が加わり、東京23区で家賃5万円なら年金7万円でも月5万6880円
最低生活費は、生活扶助のほかに、必要に応じて住宅扶助、医療扶助、介護扶助などを足して計算します。住宅扶助は、定められた基準額の範囲内で、実際に払っている家賃などが支給されます。
厚生労働省の資料に載る東京都の例では、単身の場合の住宅扶助の基準額は、1級地で5万3700円です。東京23区(1級地-1)で、家賃が5万円(基準額の範囲内)の65歳の単身の場合に、年金額ごとの差額を試算したのが次の表です。
年金月7万円の一人暮らしの生活保護費はいくら?東京23区の65歳で年金額別に家賃5万円の有無で比べた月額の試算
年金月額ごとの差額(1級地-1、65歳の単身、年金以外の収入なし)
- 年金5万円:生活扶助のみの差額2万6880円、家賃5万円を加えた最低生活費12万6880円、差額7万6880円
- 年金7万円:生活扶助のみの差額6880円、家賃5万円を加えた最低生活費12万6880円、差額5万6880円
- 年金10万円:生活扶助のみは0円(年金が2万3120円上回る)、家賃5万円を加えた最低生活費12万6880円、差額2万6880円
- 年金13万円:生活扶助のみは0円、家賃5万円を加えた最低生活費12万6880円、差額0円(年金が3120円上回る)
家賃を加えると、年金月7万円でも、差額は月5万6880円になります。年額にすると、6880円×12か月は8万2560円、5万6880円×12か月は68万2560円で、家賃の有無による差は大きいです。
この試算には、冬季加算、医療扶助、介護扶助、年金から引かれる税金や保険料の扱いなどは入っていません。実際の額は、福祉事務所が世帯の状況を調べて決めます。
【編集者の視点】
年金月7万円と聞くと、生活扶助の基準額7万円台との比較だけで、受け取れる額を考えがちです。実際には、家賃のある人は住宅扶助が加わり、差額が数万円変わります。持ち家か賃貸かで、結果が大きく変わる点を、先に整理してください。
相談に行くときは、年金の通知書、通帳、家賃の契約書など、収入と支出が分かる書類を手元に置くと、話が早く進みます。厚生労働省も、申請時に通帳の写しなどの提出を求めることがあるとしています。
元厚労省担当の専門紙の新聞記者。公的社会保障(年金・医療・介護)やNISA・iDeCoを横断分析。難解な一次データを生活者視点に翻訳し、知っておきたい家計防衛の知見と、安全で実用的な情報を提供。