特別養護老人ホームの費用は施設の料金表だけでは決まらず、入る人の所得や預貯金によっても変わります。「年金だけで足りるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。
厚生労働省は2026年5月29日付の「介護保険最新情報 Vol.1506」で、2026年8月1日から介護保険施設の食費と居住費の基準費用額・負担限度額を引き上げると周知しました。食費は第3段階①で日額30円、第3段階②で日額60円上がり、第3段階②は居住費も多くの部屋で日額100円上がっています。
この記事では、特別養護老人ホームの食費と居住費が介護保険の負担限度額認定でどう変わるのかを、厚生労働省の資料で確かめます。そのうえで、年金収入だけの単身の人がユニット型個室と多床室に入った場合の月額を試算します。
特別養護老人ホームの食費と居住費は所得で変わる
はじめに、「特別養護老人ホームは月いくらか」という問いの前提を整理しておきます。
有料老人ホームと比べる前に
介護保険施設に入ると、支払いは介護サービス費の自己負担、食費、居住費、日常生活費などに分かれます。このうち食費と居住費は原則として自己負担ですが、所得と預貯金が一定以下の人には、介護保険から補足給付(特定入所者介護サービス費)が出ます。
補足給付の対象は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護医療院とショートステイです。有料老人ホームは対象に含まれないため、同じ「月額」でも比べ方に注意が要ります。
認定を受けた人だけが安くなる
補足給付を受けるには、市区町村に申請して介護保険負担限度額認定証の交付を受けます。認定証を施設に出すと、食費と居住費の支払いが負担限度額までになり、標準的な費用である基準費用額との差額は介護保険から施設に支払われます。
同じ特別養護老人ホームの同じ部屋でも、認定の有無と所得段階によって、月の支払いが数万円違うことがあります。有料老人ホームと比べる前に、まず親が認定の対象になるかを確かめておきたいところです。
【介護保険】2026年8月からの負担限度額認定の要件
次に、2026年8月からの所得段階の要件と、特別養護老人ホームの負担限度額を確かめます。
介護保険の負担限度額認定(補足給付)の所得段階と預貯金の要件(2026年8月から)
- 【第1段階】生活保護を受けている人:預貯金の要件なし
- 【第1段階】世帯全員が市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者:預貯金1000万円以下(夫婦2000万円以下)
- 【第2段階】世帯全員が市町村民税非課税で、年金収入とその他の合計所得金額の合計が82万6500円以下:預貯金650万円以下(夫婦1650万円以下)
- 【第3段階①】同じく82万6500円超120万円以下:預貯金550万円以下(夫婦1550万円以下)
- 【第3段階②】同じく120万円超:預貯金500万円以下(夫婦1500万円以下)
- 【年金収入に含めるもの】遺族年金や障害年金などの非課税年金
対象は世帯全員が住民税非課税の人
補足給付の対象は、生活保護を受けている人と、世帯全員が市町村民税非課税の人です。世帯を分けている配偶者も含めて判定するため、配偶者に住民税がかかっていると対象になりません。
段階は、本人の年金収入とその他の合計所得金額の合計で分かれます。この年金収入には遺族年金や障害年金も含まれ、2026年8月からは第2段階の上限が80万9000円から82万6500円に見直されました。
預貯金にも上限がある
預貯金等の上限は、配偶者がいない人で第2段階650万円、第3段階①550万円、第3段階②500万円です。配偶者がいる場合は夫婦の合計で見て、それぞれ1650万円、1550万円、1500万円以下が条件です。
預貯金等には、普通預金や定期預金のほか、株式や国債などの有価証券、投資信託、金・銀、現金も含まれます。申請のときは、通帳や口座残高の写しで額を確かめられます。
特別養護老人ホームの負担限度額
特別養護老人ホームの食費と居住費の負担限度額は、所得段階と部屋の種類で決まります。2026年8月からの日額は次のとおりです。
特別養護老人ホームの食費・居住費の基準費用額と負担限度額(日額・2026年8月から)
- 【食費】基準費用額1545円、第1段階300円、第2段階390円、第3段階①680円、第3段階②1420円
- 【ユニット型個室】基準費用額2066円、第1段階880円、第2段階880円、第3段階①1370円、第3段階②1470円
- 【ユニット型個室的多床室】基準費用額1728円、第1段階550円、第2段階550円、第3段階①1370円、第3段階②1470円
- 【従来型個室】基準費用額1231円、第1段階380円、第2段階480円、第3段階①880円、第3段階②980円
- 【多床室】基準費用額915円、第1段階0円、第2段階430円、第3段階①430円、第3段階②530円
食費の基準費用額は、2026年7月までより100円上がりました。負担限度額は第3段階①が650円から680円に、第3段階②が1360円から1420円に上がっています。
特別養護老人ホームの居住費は、第3段階②でどの部屋も100円上がり、ユニット型個室は1370円から1470円になりました。第1段階から第3段階①までの居住費の限度額は据え置きです。
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在は株式会社モニクルリサーチが運営する複数のWebメディアで年金・貯蓄・退職金等の情報を発信。