年金を受け取り始めたものの「思っていたより少ない」と感じている人は、少なくないのではないでしょうか。年金の額が少ない人の暮らしを支えるために、年金に上乗せして支給されるのが「年金生活者支援給付金」です。
2026年度の給付額は、前年度から3.2%引き上げられ、老齢年金生活者支援給付金は月額5620円が基準となりました。ただし、要件を満たしていても請求しなければ受け取れない点には注意が必要です。
この記事では、年金生活者支援給付金の給付額と支給要件、請求の手続きと振込日を整理します。あわせて、10月下旬に発送が予定されている年金請求書と給付金の請求の関係も紹介します。
【2026年度】年金生活者支援給付金の給付額
年金生活者支援給付金は、公的年金などの収入やそのほかの所得が一定の基準を下回る人に、年金に上乗せして支給される給付金です。老齢・障害・遺族の3種類があり、年金と同じく年度ごとに額が改定されます。
2026年度の年金生活者支援給付金は、老齢・遺族と障害2級が月5620円、障害1級が月7025円
3つの給付金の月額
厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」によると、2026年度の月額は次のとおりです。いずれも2025年度より3.2%引き上げられました。
- 老齢年金生活者支援給付金:5620円(基準額)
- 障害年金生活者支援給付金:1級は7025円、2級は5620円
- 遺族年金生活者支援給付金:5620円
老齢は納付した期間で額が変わる
老齢年金生活者支援給付金の5620円は、あくまで計算の基準となる額です。実際の給付額は、国民年金の保険料を納めた期間と免除された期間をもとに、次の2つを足して計算します。
- 保険料納付済期間に基づく額:5620円×保険料納付済期間÷480月
- 保険料免除期間に基づく額:1万1768円×保険料免除期間÷480月(全額・4分の3・半額免除の場合)
免除期間の単価は、納付済期間の約2倍に設定されています。保険料を40年すべて納めた人は月5620円となり、未納の期間があればその分だけ少なくなるのです。
※ 免除期間の単価は1956年(昭和31年)4月2日以後生まれの人の額。4分の1免除期間は5884円。1956年(昭和31年)4月1日以前生まれの人はそれぞれ1万1734円・5867円
年金生活者支援給付金を受け取れる人の要件
3種類の年金生活者支援給付金には、それぞれ受け取るための要件が定められています。どの給付金も、前年の所得が要件にかかわってくる点は共通しています。
老齢年金生活者支援給付金
日本年金機構のリーフレット「年金生活者支援給付金 請求手続きのご案内(令和8年10月版)」によると、次の3つをすべて満たす人が対象です。
- 65歳以上で、老齢基礎年金を受けている
- 本人を含む世帯全員の市町村民税が非課税
- 前年の年金収入とその他の所得の合計が92万6500円以下(1956年(昭和31年)4月1日以前生まれの人は92万4100円以下)
所得の合計が82万6500円以下なら老齢、92万6500円以下なら補足的老齢の給付金の対象
所得の合計が82万6500円以下の人には老齢年金生活者支援給付金が、82万6500円を超えて92万6500円以下の人には補足的老齢年金生活者支援給付金が支給されます。2026年10月分から2027年9月分の給付金では、2025年の所得で判定します。
※ 1956年(昭和31年)4月1日以前生まれの人は、82万4100円以下が老齢、82万4100円超92万4100円以下が補足的老齢。障害年金・遺族年金などの非課税収入は所得に含まない
障害年金生活者支援給付金
- 障害基礎年金を受けている
- 前年の所得が「491万8000円+扶養親族の数×38万円」以下
※ 同一生計配偶者のうち70歳以上の人または老人扶養親族は48万円、特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族は63万円で計算。障害年金などの非課税収入は所得に含まない
遺族年金生活者支援給付金
- 遺族基礎年金を受けている
- 前年の所得が「491万8000円+扶養親族の数×38万円」以下
遺族基礎年金を2人以上の子が受け取っている場合は、5620円を子の人数で割った額がそれぞれに振り込まれます。なお、どの給付金も要件を満たせば自動的に支給されるわけではなく、請求の手続きが必要です。
年金生活者支援給付金の請求手続きと振込日
年金生活者支援給付金の対象になりそうな人には、日本年金機構から請求書が送られてきます。届く時期や書類の形は、年金をこれから受け取るのか、すでに受け取っているのかで分かれます。
65歳で新たに年金を請求する人は年金請求書と一緒に、年金を受給中の人ははがき型で請求する
65歳で老齢基礎年金を新たに請求する人
65歳を迎えて老齢基礎年金の請求をする人には、65歳になる3カ月前に、年金請求書(事前送付用)に同封して給付金の請求書が送られてきます。記入した給付金の請求書は、65歳の誕生日の前日以降に、年金の請求書と一緒に年金事務所へ出します。
年金と給付金の手続きを1回で済ませられるので、年金請求書が届いたら給付金の請求書も入っていないか確かめておきましょう。
年金を受け取っている途中で対象になった人
すでに基礎年金を受け取っていて、新たに給付金の対象になった人には、毎年9月の第1営業日から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が緑の封筒で順に送られます。氏名などを書き入れ、同封の目隠しシールを貼ってから切手を貼り、ポストに投函します。
2025年1月以降に届いた請求書であれば、電子申請もできます。電子申請をした場合は、はがきを郵送する必要はありません。
なお、要件を満たしているかどうかが確認できない人には、A4判の請求書と所得状況届が届きます。
振込日は偶数月の15日
年金生活者支援給付金は、原則として偶数月の15日に、その前月までの2カ月分が支払われます。15日が土日や祝日にあたるときは、その直前の金融機関の営業日に前倒しされます。
振込先は年金と同じ口座ですが、年金とは別に振り込まれます。たとえば12月15日には、10月分と11月分の給付金が入ります。
受け取りは、原則として請求した月の翌月分からです。対象になりそうなのに請求書を出していない人は、早めに手続きをしておきましょう。
年金生活者支援給付金の背景にある年金額の個人差
年金生活者支援給付金が設けられている背景には、受け取る年金の額に大きな個人差があることがあります。ここでは、2025年3月末時点の受給権者について、厚生年金と国民年金の平均年金月額を男女別に見ていきます。
厚生年金の平均月額は男女で約5万9000円の差がある一方、国民年金の男女差は約4000円
厚生年金の平均年金月額
- 男女全体:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
※ 厚生年金(第1号)の老齢年金。1階部分の老齢基礎年金を含む
国民年金の平均年金月額
- 男女全体:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
男女差が大きいのは厚生年金
厚生年金の平均は、男性の16万9967円に対して女性は11万1413円で、5万8554円の開きがあります。厚生年金は現役時代の給与と加入期間が年金額に反映されるため、働いた期間や賃金の差がそのまま表れやすいのです。
一方で、国民年金は保険料を納めた月数で額が決まります。そのため、男性6万1595円と女性5万7582円の差は4013円にとどまっています。
どちらの制度でも、平均の裏には年金額が少ない人も多く含まれています。年金生活者支援給付金は、こうした人の暮らしを下支えする役割を担っているといえるでしょう。
【10月23日・30日発送予定】年金請求書と一緒に年金生活者支援給付金も請求
先ほど見たように、65歳で年金を請求する人は、給付金の請求も同時に済ませられます。その年金請求書の発送が、10月下旬にも予定されています。
10月下旬に届く人の生年月日
日本年金機構の「主な行事・通知書発送の年間予定表」では、老齢年金請求書(事前送付用)の発送が次のように予定されています。
- 10月23日(金):1962年(昭和37年)1月21日から2月1日生まれの人
- 10月30日(金):1962年(昭和37年)2月2日から2月9日生まれの人
女性は、1964年(昭和39年)の同じ期間に生まれた人も、それぞれの日の発送対象に入っています。11月以降も、生年月日の順に発送が続く予定です。
出せるのは65歳の誕生日の前日から
年金の請求書も給付金の請求書も、出せるのは65歳の誕生日の前日以降です。たとえば1962年1月21日生まれの人なら、2027年1月20日から提出できます。
給付金は、原則として請求した月の翌月分から受け取れます。提出が1カ月遅れると、その分だけ受け取り始めも遅くなるのです。
届いたら確かめたいこと
まずは封筒の中に、年金生活者支援給付金の請求書が入っているかを確かめましょう。入っていない場合でも、世帯の課税状況や所得によって後から対象になることがあるため、気になるときは年金事務所で確認できます。
給付金の対象になるかは、本人だけでなく世帯全員の市町村民税が非課税かどうかでも決まります。同居する家族の収入も含めて、前年の状況を振り返っておくと安心です。
まとめにかえて
2026年度の年金生活者支援給付金は、老齢・遺族と障害2級が月額5620円、障害1級が月額7025円です。老齢の給付金は保険料を納めた期間と免除された期間で額が決まり、所得の合計が92万6500円以下なら補足的な給付も含めて対象になります。
給付金は、要件を満たしていても請求しなければ受け取れません。年金請求書や緑の封筒が届いたら中身を確かめ、早めに提出しておきましょう。
自分が対象になるか分からないときや、届いた書類の書き方に迷ったときは、年金事務所や給付金専用ダイヤル(0570-05-4092)で相談できます。
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在は株式会社モニクルリサーチが運営する複数のWebメディアで年金・貯蓄・退職金等の情報を発信。