財務省は2026年10月7日、11月16日に発行する個人向け国債の発行条件を発表しました。初回の利率(年率)は次のとおりで、3つのタイプがそろって年2%を超えています。
固定5年:2.39%固定3年:2.07%変動10年:2.05%
出所:財務省「個人向け国債の発行条件等」
金利が上がる中で、「NISAでも債券に投資できるのか」と考える人も多いのではないでしょうか。日本生命とフィデリティ投信でアナリスト・ファンドマネージャーを務めた、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)の泉田良輔が、一次資料で確認しながら解説します。
結論:債券そのものは対象外、債券に投資する投資信託は成長投資枠で買える
先に結論をお伝えします。個人向け国債や社債といった債券そのものは、NISAでは買えません。一方で、債券に投資する投資信託であれば、成長投資枠で買うことができます。
ただし、注意したい点が2つあります。一つは、つみたて投資枠では債券だけに投資する投資信託は買えないこと。もう一つは、名前に「債券」とつく投資信託がすべてNISAの対象になるわけではないことです。
なぜ「NISAでは債券に投資できない」と言われるのか
「NISAは株式と投資信託のための制度」。皆さんも、そんなイメージをお持ちではないでしょうか。実際、日本証券業協会のNISAに関するQ&Aでも、「NISA では、預金や国債、社債は対象となりますか?」という問いに、つみたて投資枠・成長投資枠ともに対象とはならないと答えています。
さらに2026年は、国債の税制が議論にのぼりました。金融庁は2027年度の税制改正要望に、財務省と共同で「国債に関する税制の検討」を盛り込んでいます。ただし、書かれているのは項目名だけで、「個人向け国債」や「NISA」という言葉は出てきません。何がどう変わるのかは、まだ決まっていないのです。
では、いまの制度の資料には何と書かれているのでしょうか。
一次資料で確認する:対象は「株式投資信託」
まずは対象外とされるものから見ていきましょう。国税庁は、NISAの対象についてこう説明しています。
国債や地方債といった特定公社債や公募公社債投資信託の受益権などは含まれません。
出所:国税庁「新NISAの概要」
成長投資枠で買える投資信託にも条件があります。金融庁の資料は、除外する商品を次のように示しています。
信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託及びデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外
出所:金融庁「新しいNISA」
ここで押さえておきたいのは、NISAの対象かどうかは、ファンドの名前ではなく税法上の分類で決まるという点です。
債券を中心に運用する投資信託の多くは、運用のルールを定めた約款で、株式にも投資できる余地を残しています。そうしたファンドは、中身がほぼ債券でも「株式投資信託」に分類され、NISAの対象になります。反対に、約款で株式に一切投資しないと定めた「公社債投資信託」は対象外です。つまり、同じ「債券ファンド」に見えても、NISAで買えるものと買えないものがあるのです。
元機関投資家イズミダが見る2つの落とし穴
一つ目の落とし穴は、つみたて投資枠です。つみたて投資枠で買えるのは、金融庁が定めた要件を満たす投資信託とETFに限られます。日本証券業協会のQ&Aも、つみたて投資枠では「公社債、公社債投資信託等は受け入れることができません」としており、債券だけに投資する投資信託はここでは選べません。
もっとも、債券にまったく触れられないわけではありません。金融庁がまとめた2026年度税制改正の資料では、指数に連動しない投資信託の要件が「主に株式又は公社債に投資するもの」に広げられました。債券の比率が高いバランス型であれば、つみたて投資枠でも選べる余地があるということになります。
二つ目の落とし穴は、「国債の非課税化を待つべきか」という問いです。仮に、固定5年(年2.39%)の個人向け国債に100万円を投資すると、税引前の利子は年2万3900円、かかる税金(20.315%)は年約4855円です。仮にNISAの対象になって非課税になっても、5年間で得をする金額は約2万4000円にとどまります。
一方、債券に投資する投資信託は、金利が上がると値下がりします。金利が1%上がったときの値動きの目安となるデュレーションを8年と仮定すると、100万円は約8万円目減りする計算です。
※個人向け国債は財務省発表の固定5年の初回利率、税率は20.315%。債券投信の値下がりはデュレーション8年と仮定した単純計算で、利子収入や信託報酬は考慮していません。
私は、債券を考えるときこそ、利回りの「率」ではなく、守れるお金と失うかもしれないお金の「額」で見るべきだと考えています。個人向け国債は発行から1年が経てば中途換金でき、差し引かれるのは直前2回分の利子(税引前)相当額×0.79685だけです。値動きのある債券投信とは、そもそも役割が違う商品といえるでしょう。
あなたはどうする?目的別に考える債券との付き合い方
元本を守りながら金利を受け取りたい人なら、NISAにこだわらず、課税口座で個人向け国債を買うのも一つの方法です。株式の値動きをやわらげたい人なら、成長投資枠の債券投信や、つみたて投資枠のバランス型を組み合わせる考え方があるでしょう。
迷ったときは、「非課税のメリットは期待リターンが高い資産ほど大きくなる」、という点を思い出してください。生涯で1800万円という枠を何に使うのか。その視点で考えると、答えは人によって変わるはずです。
まとめ――NISAで債券に投資するときのチェックポイント
NISAでは、個人向け国債や社債そのものは買えませんが、債券に投資する投資信託なら成長投資枠で買えます。つみたて投資枠では債券だけの投資信託は対象外で、選べるのは債券を含むバランス型などです。国債のNISA対象化はまだ要望の段階で、仮に非課税になっても100万円で年約4900円の差にとどまります。NISAで債券に投資するときは、次の点を確かめてみてください。
その投資信託がNISAの対象か(販売会社の表示や目論見書の「課税上の取扱い」)毎月分配型や信託期間20年未満の商品ではないか金利が上がったとき、どれくらい値下がりしうるか
債券は、資産を守るための道具です。何を守りたいのかを先に決めると、NISAで債券投信を買うのか、課税口座で国債を買うのかも、自然と見えてくるでしょう。
参考資料
財務省「個人向け国債の発行条件等」(2026年10月7日)(https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/houdouhappyou/p20261007.pdf)財務省「個人向け国債」パンフレット(2026年6月)(https://www.mof.go.jp/public_relations/publication/kokusai2026_pamphlet_Jun.pdf)国税庁「新NISAの概要」(https://www.nta.go.jp/users/gensen/nisa/pdf/shinnisa.pdf)金融庁「新しいNISA」(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/summary.pdf)金融庁「令和8(2026)年度税制改正について」(2025年12月)(https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20251226-2/01.pdf)金融庁「令和9(2027)年度 税制改正要望について」(2026年8月)(https://www.fsa.go.jp/news/r8/sonota/fsa_trps_r9.pdf)日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」(2025年9月)(https://www.jsda.or.jp/shijyo/seido/tax/files/202509_nisa_qa.pdf)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。