2026年8月1日、育児休業給付の額を計算する土台になる休業開始時賃金日額の上限が1万6540円になりました。厚生労働省が同日に改訂したパンフレットによると、この額は2027年7月31日まで使われます。
出産や育休を控えていると、休んでいる間にいくら入るのかは家計の大きな心配ごとです。「育休中も手取りは10割」という説明を見かける一方で、それがどの期間の話なのかは分かりにくいところがあります。
この記事では、出産手当金と育児休業給付金の支給率、出生後休業支援給付金の上乗せの要件を一次資料で確かめます。そのうえで、30代前半の女性の平均月給をもとに、産休から子が1歳になるまでの給付を時期別と総額で試算しました。
育休中の給付は30日あたりいくら?月給28万3200円なら最初の28日は約22万6560円、181日目からは約14万1600円
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、30〜34歳の女性の賃金(所定内給与額)は月28万3200円です。この月給で産休と育休を取った場合の給付を、30日あたりの額に直して並べました。
給付が最も多いのは育休の最初の28日で、181日目からは休業前の月給の半分になります
- 【休業前の月給(参考)】28万3200円
- 【産休中:出産手当金】約18万6600円
- 【育休1〜28日目:67%+13%】約22万6560円
- 【育休29〜180日目:67%】約18万9744円
- 【育休181日目以降:50%】約14万1600円
育児休業給付金は、休業開始時賃金日額に支給日数と67%を掛けた額で、育休開始から181日目以降は50%に下がります。休業開始時賃金日額は、休業前6か月の賃金の合計を180で割った額で、この試算では9440円です。
出生後休業支援給付金は、同じ賃金日額に13%を掛けた額が、最大28日分上乗せされます。産休中の出産手当金は健康保険の給付で、標準報酬月額をもとに計算するため、育休中の給付とは土台になる額が少し違います。
※試算の前提:月給は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の30〜34歳女性の所定内給与額28万3200円。残業代や手当、賞与は含めていません。休業前6か月の賃金はすべて同額、標準報酬月額は28万円とし、協会けんぽの計算式で出産手当金を求めています。
育休中の手取りは本当に10割?10割相当になるのは給付80%の最大28日、67%の期間は手取り8割相当
厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」は、育児休業中は申し出により健康保険と厚生年金の保険料が免除され、育児休業等給付は非課税であることを加味すると、休業開始時賃金日額の80%は手取り10割相当になると説明しています。
80%になるのは、67%の育児休業給付金に13%の出生後休業支援給付金が上乗せされる期間です。出生後休業支援給付金の支給日数は28日が上限なので、手取り10割相当といえるのは最大28日です。
厚生労働省のパンフレット(ママ編)では、67%の給付は手取り8割相当と説明されています。保険料の免除と非課税の扱いは同じでも、給付の割合が下がる分、手取りとの差が出ます。
- 【給付80%(最大28日)】手取り10割相当
- 【給付67%(180日目まで)】手取り8割相当
- 【給付50%(181日目以降)】休業前の賃金の半分
なお、産休中・育休中の厚生年金の保険料が免除された期間は、日本年金機構によると、将来の年金額を計算する際に保険料を納めた期間として扱われます。休んでいる間の保険料負担が年金額を減らすことはありません。
2026年8月からの上限1万6540円はどんな人に関係する?休業前の月給がおおむね49万6200円を超える人
2026年8月1日から2027年7月31日までの休業開始時賃金日額の上限は1万6540円、下限は3203円です。30日あたりの支給上限額は、給付率67%で33万2454円、50%で24万8100円です。出生後休業支援給付金の上限は、28日分で6万205円です。
賃金日額の上限1万6540円を30日分に直すと、49万6200円です。休業前6か月の賃金が月平均でこの額を超える人は、67%や13%を掛ける土台が上限で止まり、給付の割合が月給に対して下がります。
試算に使った月給28万3200円の賃金日額は9440円で、上限の6割に届きません。30代前半の女性の平均的な月給であれば、上限に当たらずに計算どおりの割合で受け取れることになります。
産休から1歳までの給付は総額いくら?約239万円で、同じ日数分の賃金の約6割
予定日どおりに出産し、産後休業の翌日から子が1歳になる前日まで育休を取った場合の給付を合計しました。産休は98日、育休は308日で、合わせて406日です。
産休から子が1歳になるまでの給付は合計約238万6545円で、約半分を育児休業給付金の67%の期間が占めます
- 【出産手当金(98日)】約60万9560円
- 【育児休業給付金 67%(180日)】約113万8464円
- 【育児休業給付金 50%(128日)】約60万4160円
- 【出生後休業支援給付金 13%(28日)】約3万4361円
- 【合計(406日)】約238万6545円
同じ406日分を休業開始時賃金日額9440円で数えると、約383万2640円です。給付の合計は、その約62%に当たります。最初の28日は手取り10割相当でも、1年あまりを通すと賃金の6割程度になります。
差が開くのは、育休が180日を超えて50%の期間に入ってからです。この試算では、育休308日のうち128日が50%の期間でした。育休を子が1歳になるまで続けるなら、181日目以降の家計を先に見積もっておくと安心です。
出産のときには、これとは別に健康保険から出産育児一時金が支給されます。厚生労働省によると、子1人につき原則50万円で、出産費用に充てるための給付なので、この試算の合計には含めていません。
※試算の前提:出産手当金は日額6220円(標準報酬月額28万円÷30日を10円未満四捨五入し、3分の2を掛けた額)×98日。育児休業給付金・出生後休業支援給付金は賃金日額9440円をもとに計算し、休業中に賃金は支払われないものとしています。実際の支給額は支給単位期間ごとの端数処理で前後します。
元厚労省担当の専門紙の新聞記者。公的社会保障(年金・医療・介護)やNISA・iDeCoを横断分析。難解な一次データを生活者視点に翻訳し、知っておきたい家計防衛の知見と、安全で実用的な情報を提供。