iDeCoに入っていれば税金は自動で安くなる、と考えている会社員の方は少なくありません。ただ、iDeCoの掛金を自分の銀行口座から払っている会社員は、年末調整で「小規模企業共済等掛金払込証明書」(以下、払込証明書)を出さないと、掛金の控除が受けられません。
確定拠出年金の講師としてセミナーに登壇していた頃も、「年末調整は何を出せばいいのか」とよく聞かれる話題でした。ここでは、手続きが要る人と要らない人の分け方、払込証明書が届く時期、出し忘れたときの取り戻し方を整理します。
あわせて、企業年金のない会社員の平均的な掛金と上限の掛金で、年末調整をすると所得税と住民税が年いくら軽くなるかを試算しました。
※平均的な掛金の月1万6363円は、国民年金基金連合会「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2026年8月)」の第2号加入者(企業年金に未加入)の平均掛金額です。年収は、国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」の給与所得者の平均給与と、正社員の平均給与をもとにしています。
iDeCoの年末調整は誰に必要?口座振替(個人払込)の会社員は払込証明書の提出が必要で、給与天引き(事業主払込)なら不要
国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」によると、iDeCoの掛金(個人型年金加入者掛金)は、その年に支払った全額が所得から差し引かれます。控除を受けるには、支払った掛金の証明書を、年末調整の「給与所得者の保険料控除申告書」か確定申告書に添付するか、提出のときに提示します。
会社員のiDeCoの年末調整で手続きが要るかどうかは、掛金の払い方で分かれます。
- 【個人払込(自分の口座から引き落とし)】国民年金基金連合会から払込証明書が届く。保険料控除申告書の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に掛金の額を書き、払込証明書を付けて会社に出す
- 【事業主払込(給与から天引き)】払込証明書は発行されない。会社が天引きした掛金の額をもとに年末調整をするので、iDeCoの年末調整の手続きは要らない
どちらか分からないときは、給与明細でiDeCoの掛金が天引きされているかを見てください。天引きの欄がなく、毎月銀行口座から引き落とされていれば個人払込です。なお、自営業などの第1号加入者は年末調整がないので、確定申告で控除を受けます。
iDeCoの年末調整に使う払込証明書はいつ届く?1〜9月に払った人は10月23日発送、10月以降に初めて払った人は11月〜翌年1月
国民年金基金連合会「令和8年分の小規模企業共済等掛金払込証明書(控除証明書)の発行時期と対象となる方」によると、2026年分の払込証明書は、その年の最初の払込の月によって届く時期が変わります。
- 【1〜9月に払込があった人(一括発行)】ハガキは10月23日発送、電子データは10月21日から順次発行
- 【10月に初めて払い込んだ人(追加発行①)】ハガキは11月25日発送、電子データは11月20日発行
- 【11月に初めて払い込んだ人(追加発行②)】ハガキは12月22日発送、電子データは12月18日発行
- 【12月に初めて払い込んだ人(追加発行③)】ハガキは2027年1月22日発送、電子データは1月20日発行
一括発行の払込証明書には、1〜9月に払い込んだ額に、10〜12月の払込予定額を足した額が書かれています。12月の払込を待たずに、そのままiDeCoの年末調整に使えます。
なくしたときや、追加発行より早く必要なときは、再発行を頼めます。11月や12月に初めて払い込んだ人は、勤務先の年末調整の締め切りに間に合わないことがあり、その場合は確定申告で控除を受けます。
iDeCoの年末調整で軽くなる税金はいくら?平均の掛金月約1.6万円なら年約3万〜4万円、上限の月2.3万円なら年約4.2万〜5.2万円
掛金は全額が所得から差し引かれるので、iDeCoの年末調整で軽くなる税金は、おおむね「1年間の掛金×(所得税率×1.021+住民税率10%)」です。所得税率が5%か10%かで、軽くなる額が変わります。
- 【年収487万円(所得税率5%)・掛金月約1.6万円】年約3万円(所得税約1万円、住民税約2万円)
- 【年収487万円(所得税率5%)・掛金月2.3万円】年約4.2万円(所得税約1.4万円、住民税約2.8万円)
- 【年収559万円(所得税率10%)・掛金月約1.6万円】年約4万円(所得税約2万円、住民税約2万円)
- 【年収559万円(所得税率10%)・掛金月2.3万円】年約5.2万円(所得税約2.4万円、住民税約2.8万円)
※試算の前提:2026年分の所得税と、2027年度の住民税(所得割10%)で試算。年収487万円は国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」の1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与、559万円は正社員(正職員)の平均給与。
※社会保険料は給与の約15%、基礎控除は国税庁「No.1199 基礎控除」の令和8年分の額(104万円)、給与所得控除は国税庁「No.1410 給与所得控除」の令和8年分の表で計算し、税率は「No.2260 所得税の税率」の表で当てはめた。
※所得税には復興特別所得税を含む。年収559万円・掛金月2.3万円では、控除後の課税所得のうち195万円以下の部分は税率5%で計算した。
※掛金月約1.6万円は企業年金のない会社員の平均掛金額(月1万6363円)、月2.3万円は企業年金のない会社員の掛金の上限。
iDeCoの年末調整で軽くなる税金(年額・試算)
所得税の分は、年末調整で12月か翌年1月の給与と一緒に精算されます。住民税の分は、年末調整の結果が市区町村に送られ、翌年6月からの住民税が下がる形で反映されます。
なお、2026年12月1日に施行される改正で、iDeCoの掛金の上限が引き上げられることが決まっています。今年のiDeCoの年末調整で控除の対象になるのは、2026年中にいまの上限の範囲で払った掛金です。
iDeCoの年末調整に間に合わなかったら?確定申告(還付申告)で取り戻すことができ、出せるのは翌年1月1日から5年間
払込証明書を出し忘れた場合も、控除がなくなるわけではありません。国税庁「No.2030 還付申告」によると、還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間出せます。2026年分なら、2027年1月から5年間です。
- 【年末調整の前に気づいた】勤務先の締め切りまでに、保険料控除申告書に書いて払込証明書を付けて出す
- 【年末調整のあとに気づき、確定申告はしていない】確定申告(還付申告)で小規模企業共済等掛金控除を受ける
- 【確定申告をしたが、掛金の控除を入れ忘れた】更正の請求をする。期限は原則として法定申告期限から5年以内(国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」)
住民税も、確定申告の内容が市区町村に送られて計算し直されます。また、2026年分以後の所得税で、2027年1月1日以後に確定申告書を出す場合は、払込証明書の添付に代えて、一定の事項を書いた明細書を付けることもできます(国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」)。
【元DC講師の視点】検証:iDeCoの年末調整で12月に戻るのは所得税の分だけ
確定拠出年金の講師としてセミナーで税制優遇を説明すると、前のめりになって聞く人が多くいました。それだけ関心の高い税制優遇ですが、iDeCoの年末調整で手続きが要るかどうかは、掛金の額ではなく払い方で決まります。
まずは給与明細で、天引きかどうかを確かめていただきたいと思います。
試算の数字には、もう一つ見ていただきたい点があります。住民税の分は所得税率にかかわらず掛金の10%なので、平均の掛金なら年収487万円でも559万円でも約2万円で同じです。年収で差がつくのは所得税の分だけです。
所得税率が5%の人では、軽くなる約3万円のうち約2万円、つまり3分の2ほどが住民税の分です。年末調整で12月や1月の給与に戻ってくるのは約1万円で、残りは翌年6月からの住民税が少しずつ下がる形で届きます。年末調整の還付額だけを見て、効果が小さいと受け止めないようにしたいところです。
国民年金基金連合会「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2026年8月)」では、毎月定額で払っている企業年金のない会社員約206万人のうち、約117万人(約57%)が月2万円以上の区分です。上限に近い掛金を払っている人ほど、払込証明書1枚で変わる税額も大きくなります。
払込証明書は、届いたら保険料控除申告書と一緒にしておくのが確実です。iDeCoは老後に向けて長く続ける制度なので、毎年の年末調整の手続きも、その一部として習慣にしていただければと思います。
まとめ
iDeCoの掛金を自分の口座から払っている会社員は、国民年金基金連合会から届く払込証明書を、年末調整の保険料控除申告書に付けて出す必要があります。給与天引きなら会社が処理するので、手続きは要りません。企業年金のない会社員の平均的な掛金なら、軽くなる税金は年約3万〜4万円です。
出し忘れても、確定申告(還付申告)なら翌年1月1日から5年間、すでに申告した人は更正の請求で取り戻せます。払込証明書が届かないときや手続きに迷うときは、加入している運営管理機関や国民年金基金連合会、勤務先の担当部署、税務署で確かめてください。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の税額は、収入や家族構成、ほかの控除によって変わります。手続きの詳細は、国税庁や国民年金基金連合会の最新の情報、勤務先の担当部署でご確認ください。
みずほ銀行出身。FP2級保有。確定拠出年金の講師として全国でセミナーに登壇。フィンテック企業広報を経て、現在は株式会社モニクルリサーチにて、官公庁のデータをもとに、年金や資産運用、新NISA、iDeCo等の記事を執筆。