生活保護を利用したら、手持ちのスマホは手放さなければならないのか。そんな疑問を持つ人も、いると思います。
厚生労働省の実施要領は、持っていてよい物品かどうかを、世の中への「普及率」を物差しにして決めるとしています。総務省が令和8年5月29日に公表した調査では、世帯のスマートフォン保有割合は91.8%でした。ここでは、この2つを並べたうえで、毎月の通信料が生活扶助のどれくらいにあたるかを、令和8年10月以降の基準額で試算します。
※実施要領の保有可否の基準は、厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年社保第34号)の原文によります。原文を確認したのは課長通知(問答)の部分で、局長通知と次官通知は確認していません。スマートフォンの保有割合は、総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」(令和8年5月29日公表)によります。生活扶助の額は、厚生労働省の令和8年度の基準額によります。
生活保護の保有可否は、実施要領の「普及率」で判断され、原文に「携帯電話」の語は出てこない
生活保護では、利用できる資産を生活のために活用することが求められます。その一方で、日常生活に広く普及している物品まで手放させると、生活が立ちゆかなくなるため、保有を認める基準が決められています。
その基準が、昭和38年4月1日の社保第34号の課長通知(問答)にあります。第3「資産の活用」の問6は、「当該地域の一般世帯との均衡を失することにならない」かどうかの判断基準を示しています。
答えは、物品の普及率で判断するというものです。具体的には、当該地域の全世帯の70%程度、利用の必要性が同様の状態にある世帯に限ってみた場合は90%程度の普及率を基準として認定するとされています。
ここでいう「当該地域」は、通常、保護の実施機関の所管区域または市町村の行政区域を単位とします。実情に応じて、市の町内会や町村の集落などを単位にすることもできるとされています。
この通知の原文を確認したところ、「携帯電話」「スマートフォン」の語は1か所もありませんでした。スマートフォンだけを名指しした基準は、確認した原文の中にはありません。
スマートフォンの世帯保有割合は91.8%で、実施要領の70%程度の基準を上回っている
次に、基準と最新の普及率を比べます。総務省の令和7年通信利用動向調査(令和7年8月末時点、令和8年5月29日公表)では、世帯のスマートフォン保有割合は91.8%でした。
実施要領の基準は、当該地域の全世帯の70%程度です。全国の世帯の値は、この70%程度を上回っています。
ただし、総務省の値は全国の世帯の保有割合です。実施要領が基準にするのは、当該地域の全世帯の普及率で、利用の必要性が同様の世帯に限る場合は90%程度です。地域ごとの値や、必要性が同様の世帯の値は、この調査からは分かりません。
生活保護でスマートフォンは持てる?実施要領が示す普及率の基準と、総務省が公表した世帯のスマートフォン保有割合(令和7年8月末)を比べた早見表
基準と保有割合の比較
- 当該地域の全世帯:普及率の目安は70%程度。スマートフォンの世帯保有割合は、全国の世帯で91.8%
- 利用の必要性が同様の世帯に限った場合:普及率の目安は90%程度。この区分では調査から分からない
実際に保有を認めるかどうかは、保護の実施機関である福祉事務所が、世帯の状況を見て判断します。迷う場合は、ケースワーカーに確認してください。
通信料の別枠は?
持てるかどうかと、毎月の通信料をどうまかなうかは、切り離して考える必要があります。実施要領の原文を確認しても、通信料を別に支給するという定めは、見つかりませんでした。
通信料が生活扶助の中に含まれるのか、どの費目にあたるのかを明記した記載も、今回確認した資料の範囲では見つかっていません。実際の扱いは、福祉事務所の判断になります。
このため、通信料が毎月の生活費のどれくらいを占めるのかを、数字で見ておくことが役に立ちます。次の節で、令和8年10月以降の生活扶助の額と比べます。
生活保護でスマートフォンの通信料に別枠は出る?実施要領の原文で確認した「携帯電話」の語と通信料の定め、保有可否の基準を3つの論点で整理した一覧
論点ごとに原文で確認したこと
- 「携帯電話」の語:原文に出てこない(0か所)
- 保有可否の基準:当該地域の全世帯の70%程度の普及率(必要性が同様の世帯は90%程度)
- 通信料の別枠:支給するという定めは確認できなかった
この一覧は、原文に書かれていないことを確認したものです。実際の運用は、福祉事務所が決めます。
元厚労省担当の専門紙の新聞記者。公的社会保障(年金・医療・介護)やNISA・iDeCoを横断分析。難解な一次データを生活者視点に翻訳し、知っておきたい家計防衛の知見と、安全で実用的な情報を提供。