政府広報オンラインは2026年10月21日、最高裁判決を踏まえた保護費の追加給付について、対象になる世帯と申出の方法を案内する記事を更新しました。2013年8月から2026年3月までのあいだに生活保護を受けていた世帯が対象で、いまは受給していない世帯も含まれます。
いま生活保護を受けていない世帯は、自分から申し出なければ追加給付を受け取れません。申出の期限は2027年7月31日で、数年前に一時的に受給していた人や、当時の世帯主を亡くした家族にも関わる手続きです。
この記事では、受給していた時期によって追加給付の対象と額がどう変わるのかを、厚生労働省の資料で確かめます。そのうえで、だれが・どの自治体に申し出るのかを整理します。
【保護費の追加給付】2013年8月から2026年3月までの受給が対象
はじめに、追加給付が行われることになった経緯と、対象になる世帯を確かめます。
最高裁判決と追加給付
2013年から3年かけて行われた生活扶助基準の見直しについて、最高裁判所は2025年6月27日の判決で「デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続には過誤、欠落があった」と指摘し、違法と判断しました。この判決を受けて、厚生労働省は学識経験者による専門委員会で対応を検討し、2025年11月に報告書がまとめられています。
この報告書などを踏まえて行われるのが、保護費の追加給付です。支給されるのは、生活扶助基準の「新たな水準」と「従来の水準」との差額になります。
対象になる世帯
厚生労働省の相談センターの案内では、対象は次の世帯です。
- 2013年8月から2018年9月までのあいだに生活保護を受けたことがある、すべての世帯
- 2018年10月から2026年3月までのあいだに生活保護を受けたことがある世帯のうち、一定期間入院・入所していた人、障害のある人で加算が算定されていた人、毎年12月に支給される期末一時扶助費が算定された世帯など
対象期間のすべてで受給している必要はなく、一部の期間でも受給していれば対象になります。就労収入があって生活扶助費が支給されていなかった月や、一部だけ支給されていた月がある場合も、追加給付の対象になるのです。
【生活保護の追加給付】受給していた時期で対象が変わる
追加給付の対象になる期間は、どの基準生活費や加算を受けていたかによって異なります。デフレ調整の影響が及んでいる期間が、基準生活費・加算ごとに決められているためです。
保護費の追加給付 受給していた費目ごとの対象期間
- 居宅の基準額(第1類・第2類):2013年8月〜2018年9月
- 母子加算(在宅者):2013年8月〜2018年9月
- 冬季加算(居宅・救護施設等):2013年8月〜2015年9月
- 期末一時扶助:2013年8月〜2026年3月
- 入院患者日用品費・救護施設等の基準額・介護施設入所者基本生活費:2013年8月〜2026年3月
- 障害者加算・妊産婦加算・在宅患者加算など:2013年8月〜2026年3月
- 未成年者控除(20歳未満控除):2013年8月〜2026年3月
2018年9月までは居宅の基準額も対象
自宅で暮らしながら受給していた世帯の場合、生活費の中心になる居宅の基準額(第1類・第2類)が対象になるのは2018年9月までです。追加給付率は、2013年8月からが従来の水準に対して0.8%、2014年4月からが1.6%、2015年4月からが2.4%と、3段階で上がります。
2018年10月以降は加算や期末一時扶助など
一方で2018年10月以降は、期末一時扶助や障害者加算、入院・入所中の基準額などに対象が絞られます。この時期だけ受給していた世帯は、こうした費目が算定されていたかどうかで、対象になるかが分かれます。
【追加給付額の例】都市部の60歳代単身で10万5000円
では、実際にいくらになるのでしょうか。厚生労働省は、2013年8月から2026年3月まで続けて受給していた世帯について、追加給付額の例を期間ごとに示しています。
例)2013年8月〜2026年3月に続けて受給した場合 保護費の追加給付額(厚生労働省の例)
- 都市部(1級地-1)・60歳代単身:合計10万5000円(2013年8月〜2014年3月 5000円、2014年4月〜2015年3月 1万6000円、2015年4月〜2018年9月 8万1000円、2018年10月〜2026年3月 2000円)
- 地方部(3級地-2)・60歳代単身:合計8万5000円(同 4000円、1万2000円、6万5000円、2000円)
- 都市部(1級地-1)・30歳代夫婦と4歳の子:合計20万4000円(同 1万円、3万円、15万8000円、4000円)
- 地方部(3級地-2)・30歳代夫婦と4歳の子:合計16万1000円(同 8000円、2万4000円、12万5000円、3000円)
42カ月分が大半を占める
都市部の60歳代単身の例では、合計10万5000円のうち8万1000円が、2015年4月から2018年9月までの42カ月分です。追加給付率が2.4%に上がり、居宅の基準額も対象になっている時期なので、この期間に受給していたかどうかで額が大きく変わります。
反対に、2018年10月から2026年3月までの90カ月分は2000円でした。この例は各種加算を算定せず、2018年10月以降は期末一時扶助だけを数えているためです。
加算を受けていた世帯や、入院・入所していた世帯は、例の額より多くなります。
なお、亡くなった人は追加給付の対象になりません。当時3人で受給していて1人が亡くなっている世帯なら、2人分の追加給付になります。
受給していた時期と費目によって、追加給付の額には大きな幅があります。2018年10月以降だけの受給なら数千円の例もあれば、2013年から続けて受給した3人世帯で20万円を超える例もあります。
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在は株式会社モニクルリサーチが運営する複数のWebメディアで年金・貯蓄・退職金等の情報を発信。