生活保護を受けている世帯で高校生の子どもがアルバイトを始めると、稼いだぶんだけ保護費が減ってしまうのではないかと迷う家庭もあります。たとえば、親が病気で働けない4人世帯で、高校2年の子どもが月3万円ほど稼ぐようなケースです。
部活動や進学の準備にお金がかかる時期だけに、アルバイト代がどう扱われるのかは気になるところです。
厚生事務次官通知「生活保護法による保護の実施要領について」には、働いて得た収入から差し引く「基礎控除額表」と、20歳未満の人の収入から月1万1900円を差し引く決まりが載っています。高校生のアルバイト代は、稼いだ額がそのまま保護費から引かれるわけではないのです。
この記事では、高校生のアルバイト収入から差し引かれる額と、収入として数えない使い道を通知で確かめます。そのうえで、月2万円・3万円・5万円の場合に保護費がいくら減るのかを試算します。
【再定義】稼いだ分だけ保護費が減るわけではない
はじめに、「アルバイト代のぶん保護費が減る」という受け止め方を、生活保護の仕組みから見直します。
収入は届け出が必要
生活保護法第61条では、収入や支出に変動があったときは、すみやかに福祉事務所に届け出ることを求めています。高校生のアルバイト代も世帯の収入にあたるため、届け出の対象です。
届け出をしないまま保護費を受け取っていると、あとから費用の返還を求められることがあります。生活保護法第78条にもとづく徴収で、本来の額に上乗せして求められる場合もあるのです。
差し引かれるのは控除のあとの額
届け出た収入は、そのまま全額が保護費から差し引かれるわけではありません。働くための必要経費として控除を引いた残りが、収入として認定されます。
高校生の場合に関係する控除は、主に基礎控除と20歳未満控除の2つです。この2つを合わせると、月3万円ほどのアルバイト代なら大部分が差し引かれずに残ります。
【再確認】高校生のアルバイト代から引かれる2つの控除
次に、2つの控除の額と、収入として数えない使い道を、厚生労働省の通知で確かめます。
基礎控除
基礎控除は、収入の額に応じて次官通知の「基礎控除額表」で決まります。世帯でいちばん収入が多い人は「1人目」の欄、ほかの人は「2人目以降」の欄を使います。
1人目の欄では、月1万5199円までの収入は全額が控除されます。収入が2万7000円から3万999円なら1万6400円、4万7000円から5万999円なら1万8400円と、収入に応じて控除額が増えていくのです。
20歳未満控除
20歳未満の人が働いた収入からは、基礎控除とは別に月1万1900円が控除されます。高校生のアルバイト代は、多くの場合この控除の対象です。
ただし、単身で暮らしている人や、配偶者や自分の子とだけで独立した世帯を営んでいる人は対象外です。親と同じ世帯で暮らす高校生であれば、この条件には当たりません。
収入として数えない使い道
課長通知「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」では、高校生がアルバイトで得たお金のうち、就学に必要な費用にあてる分を収入として認定しない扱いを示しています。私立高校の授業料の不足分や修学旅行費、学習塾費などがこれにあたります。
クラブ活動費も対象ですが、学習支援費を使っても足りない分に限られます。どこまでが必要な額かは福祉事務所が判断するため、事前に相談しておくことが大切です。
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在は株式会社モニクルリサーチが運営する複数のWebメディアで年金・貯蓄・退職金等の情報を発信。