「4歳の子どもと2人で暮らしています。パートの収入だけでは家賃を払うと手元にほとんど残らず、生活保護も考えています。保育園の送迎と通勤に使っている車は、手放さなければいけないのでしょうか」
小さな子どもを育てるひとり親から、このような疑問の声が届くこともあります。車がないと保育園にも職場にも通えない地域では、生活保護を申請するかどうかの判断に直結する問いです。
厚生労働省が2026年10月7日に公表した「被保護者調査(令和8年7月分概数)」によると、生活保護を受けている世帯のうち母子世帯は5万4892世帯でした。10月23日の厚生労働大臣の記者会見では、未就学児を育てる一人親世帯の自動車保有の要件について、見直しの検討状況が質問されています。
この記事では、生活保護で自動車の保有が認められる場合を厚生労働省の通知で確かめます。そのうえで、母と4歳の子の2人世帯が受け取る生活扶助と加算を、2026年10月からの基準で試算します。
生活保護を受ける母子世帯は5万4892世帯
はじめに、生活保護を受けている世帯の内訳を、厚生労働省の被保護者調査で確かめます。
世帯類型別の内訳
2026年7月分の概数では、保護停止中を除く163万5284世帯が生活保護を受けていました。世帯類型別の内訳は次のとおりです。
- 高齢者世帯:90万3116世帯(55.2%)
- 障害者・傷病者世帯:41万8114世帯(25.6%)
- その他の世帯:25万9162世帯(15.8%)
- 母子世帯:5万4892世帯(3.4%)
母子世帯は全体の3.4%で、およそ30世帯に1世帯の割合です。高齢者世帯が半数を超えるなかで、数としては最も少ない類型になっています。
母子世帯は前年より6.5%少ない
前年同月の母子世帯は5万8698世帯で、1年で3806世帯、率にして6.5%減りました。同じ期間の世帯総数の減少は0.2%にとどまっており、母子世帯の減り方が目立ちます。
なお、被保護者調査の世帯類型は世帯の構成で分けたものです。父と子の世帯などは母子世帯には含まれない点に注意が必要です。
【生活保護と自動車】保有が認められるのは通勤・通院など
次に、冒頭の声にある車の扱いを、厚生労働省の資料と通知で確かめます。
自動車は資産として扱われる
生活保護は、預貯金や不動産など利用できる資産を、最低限度の生活のために活用することが前提です。厚生労働省の「生活保護制度に関するQ&A」でも、自動車は資産になるため原則として処分し、生活の維持に活用することになると説明しています。
そのうえで同じQ&Aは、障害のある人の通勤や通院などに必要な場合には、保有が認められることがあるとしています。どんな場合に認められるかは、課長通知「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」の問答に具体的に書かれているのです。
生活保護で自動車の保有が認められる主な場合(2026年10月時点)
- 通勤:障害者が通勤に使う、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住む・勤務先がある、深夜勤務などで通勤する
- 通勤の条件:自動車以外に通勤する方法が全くないか、きわめて困難。障害者以外は、処分価値が小さい・勤務の収入が維持費を大きく上回る など
- 仕事を中断している間:概ね6か月以内に保護から抜けることが確実で処分価値が小さければ処分の指導を保留。保留は保護開始から概ね1年まで
- 通院・通所・通学:障害者(児)が使う、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住む。排気量おおむね2000cc以下・維持費が確実に賄える など
通勤用の自動車
課長通知の問9では、通勤用の自動車を持てる場合として、障害者の通勤、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住んでいる人や勤務先がその地域にある人の通勤、深夜勤務などの4つを挙げています。いずれも、自動車以外に通勤する方法が全くないか、通勤がきわめて困難であることが前提です。
障害者の通勤以外の3つには、さらに条件があります。世帯の状況からみて自動車での通勤がやむを得ず自立に役立っていること、地域の普及率からみて車のない低所得世帯との均衡を失しないこと、処分価値が小さいこと、勤務の収入が維持費を大きく上回ることの4つです。
仕事を休んでいる間の扱い
問9の2では、失業や病気で仕事を中断していても、再開すれば通勤に車を使う見込みがある人の扱いを示しています。概ね6か月以内に働いて保護から抜けることが確実に見込まれ、車の処分価値が小さければ、処分の指導を行わなくてよいとされています。
求職活動などを続けていれば、この保留は保護の開始から概ね1年まで延ばせます。ただし保留の間は、公共交通機関の利用が著しく困難な地域で求職活動に使う場合を除き、車を使うことは認められません。
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在は株式会社モニクルリサーチが運営する複数のWebメディアで年金・貯蓄・退職金等の情報を発信。