年金を受け取るようになると、届く書類が増え、どれに手続きが要るのか分かりにくいと感じる人もいるのではないでしょうか。シニア向けの給付金や手当の中には、条件に当てはまっていても、申請や届け出をしないと受け取れないものがあります。年末を前に、秋から手元に届いた年金や医療、介護の書類を、一度まとめて見直しておきたいところです。
その代表が年金生活者支援給付金です。日本年金機構は、新たに給付金を受け取れる人へ、令和8年度の請求書(はがき型)を2026年9月1日から順次送っています。本記事では、年金生活者支援給付金を中心に、申請や届け出をしないと受け取れない給付金・手当を、日本年金機構と厚生労働省の資料で確かめます。
記事の後半では、給付金を受け取っている人の件数、年金に加算される加給年金額と振替加算、医療や介護の負担を払い戻す高額療養費などのしくみも紹介します。
年金生活者支援給付金は、令和9年1月4日までに届けば10月分から
まずは、年金生活者支援給付金の手続きと、請求書(はがき)を出す時期の目安を見てみましょう。
年金生活者支援給付金は「認定請求」の手続きをして受け取る
日本年金機構の年金Q&Aでは、年金生活者支援給付金を受け取るためには認定請求の手続きが必要だとしています。日本年金機構の「令和8年4月分からの年金額等について」によると、令和8年度の老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は月額5620円です。老齢年金生活者支援給付金を受け取れるのは、65歳以上で老齢基礎年金を受けていて、本人を含む世帯全員の市町村民税が非課税であり、前年の年金収入金額とその他の所得の合計が一定の金額以下である人です。すでに給付金を受け取っている人は、新たな手続きはいりません。
さかのぼって受け取れる締めは令和9年1月4日。遅れると請求した月の翌月分から
同機構の年金Q&Aによると、はがきに書かれた提出期限を過ぎても手続きはできます。支給要件に当てはまる人は、令和9年1月4日(月曜)までに手続きの書類が日本年金機構に届けば、さかのぼって令和8年10月分から受け取れます。間に合わないと、受け取りは請求した月の翌月分からになります。申請や届け出が要る主な給付金・手当は、次のとおりです。
- 年金生活者支援給付金:請求書(はがき)を出す。支給要件に当てはまる人は、令和9年1月4日までに届けば令和8年10月分から
- 加給年金額:対象者が確認されていなかった場合などは加算開始事由該当届を出す
- 振替加算:基本は手続き不要だが、例外の場合は該当届を出す
- 高額療養費:支給申請書を出す。診療を受けた月の翌月の初日から2年で時効
- 高額介護サービス費:介護サービスの自己負担が著しく高額になったときに市区町村が支給。手続きは市区町村で確かめる
申請や届け出が必要になることがある、シニアの給付金・手当の一覧
どの制度も、条件に当てはまっていれば自動で始まるとはかぎらない点には注意が必要です。とくに年金生活者支援給付金は、はがき1枚の手続きで、秋の分からさかのぼって受け取れるかどうかが変わります。一度手続きをして受け取り始めれば、引き続き支給要件を満たしているかぎり、原則として新たな手続きはいらないため、最初の1回を逃さないことが大切だと考えられます。はがきは、ほかの年金の通知と同じころに届くと、見落としてしまうこともあるかもしれません。手元に出していない書類がないかを、年末までに一度見直しておくとよいでしょう。
年金生活者支援給付金は、請求書(はがき)を出してはじめて受け取れる給付金で、支給要件に当てはまる人なら令和9年1月4日までに日本年金機構へ届けば令和8年10月分から受け取れます。
【受け取っている件数は総数で781万9978件(障害・遺族を含む)】老齢年金生活者支援給付金の平均は月4146円
では、年金生活者支援給付金はどのくらいの人に支給されているのでしょうか。厚生労働省の統計で見ておきましょう。
件数は総数で781万9978件、そのうち老齢は450万4441件
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、令和7年3月に認定されている年金生活者支援給付金の件数は、障害・遺族も含めた総数で781万9978件でした。老齢年金生活者支援給付金は450万4441件、所得が基準を少し超える人の補足的老齢年金生活者支援給付金は106万664件です。
平均給付金額(月額)は老齢で4146円、補足的老齢で2177円
同資料では、平均給付金額(月額)は老齢年金生活者支援給付金が4146円、補足的老齢年金生活者支援給付金が2177円です。これらは令和7年3月時点の数字で、令和8年度の基準額5620円への改定の前の金額です。
年金生活者支援給付金を受け取っている件数と平均給付金額【令和7年3月】
件数の多さから見ても、年金生活者支援給付金は多くの年金生活者の暮らしを支えている制度と考えられます。1回の振込は数千円でも、原則として偶数月ごとに届くため、1年で考えると家計の中で小さくない金額になると考えられます。金額だけを見ると小さく感じても、年金に上乗せされる収入として決まった月に届くことには、家計の見通しを立てやすくする面もあるでしょう。受け取れるはずの人が手続きをしないままでいると、その分を受け取れない期間が生まれる点にも気をつけたいところです。また、件数は令和7年3月の時点のものなので、令和8年度に新たに対象となった人はこの数字に入っていません。秋にはがきが届いた人は、自分がその新しい対象にあたるかを、はがきの中身で確かめておきたいところです。
【年金に加算される手当】加給年金額と振替加算は、届け出が必要な場合がある
年金生活者支援給付金のほかにも、年金に関係する手当で、届け出が必要になるものがあります。
加給年金額は、届け出をして配偶者などの分が加算される
日本年金機構の「加給年金額と振替加算」によると、加給年金額は、厚生年金保険の被保険者期間が原則20年以上ある人が、65歳になった時点(定額部分の支給が始まる年齢に達した時点の場合もある)で、生計を維持している65歳未満の配偶者や、18歳到達年度の末日までの子(1級・2級の障害の状態にある場合は20歳未満)がいる場合に加算され、加算のためには届け出が必要です。令和8年4月からの加給年金額は、配偶者と1人目・2人目の子が各24万3800円、3人目以降の子が各8万1300円で、配偶者の分には、老齢厚生年金を受けている人の生年月日に応じて3万6000円から17万9900円が特別加算されます。特別支給の老齢厚生年金の請求時に対象者が確認されていなかった場合などは、「加給年金額加算開始事由該当届」を出すと、加算開始日の属する月の翌月分から受け取れます。
振替加算は、基本は手続き不要だが、該当届が必要な場合もある
同機構によると、振替加算は、大正15年4月2日〜昭和41年4月1日生まれで、本人の厚生年金の加入期間が短いなどの条件に当てはまる人が対象で、基本的に手続きは必要ありません。ただし、本人が65歳になったあとに、配偶者が厚生年金保険の加入期間20年以上の老齢年金を受け取るようになった場合などは、「老齢基礎年金額加算開始事由該当届」の提出が必要で、提出先は年金事務所や街角の年金相談センターです。配偶者に加給年金額が支給されていながら、本人の生計維持関係の申し立てがあとから行われた事例については、原則として時効を適用して5年分の過去の振替加算を支払い、申告が行われていた可能性が高いと判断される場合は時効の分も支払うとしています。
加給年金額や振替加算は、家族の状況によって受け取れるかどうかが変わります。届け出が要るかどうかは、夫婦それぞれの年齢や年金の加入期間の組み合わせで決まるため、夫婦で年金の受け取りを始める時期が違う家庭ほど、見落としが起きやすいと考えられます。まず、夫婦それぞれの年金の加入期間と受け取りを始める年齢を書き出し、次に、届いた年金振込通知書で金額に変わりがないかを見ておくと、確かめるきっかけになるでしょう。配偶者が年金を受け取り始めたときや、家族の構成が変わったときは、届け出が要るかどうかを年金事務所で確かめておくと、受け取れるはずの加算を逃しにくくなるでしょう。
【医療と介護の払い戻し】高額療養費は申請して受け取る。介護の負担にも払い戻しの制度がある
最後に、医療や介護の負担が大きくなったときに払い戻される制度と、これからの備えを確かめておきましょう。
高額療養費は、支給申請書を出すと払い戻され、時効は2年
厚生労働省の「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」によると、高額療養費は、加入している医療保険に支給申請書を出すことで支給され、自動的に口座に振り込む保険者もあります。支給を受ける権利の時効は診療を受けた月の翌月の初日から2年で、時効にかかっていなければ、さかのぼって申請できます。自動で振り込まれる保険者がある一方で申請が要る保険者もあり、同じ制度でも、加入している医療保険によって手間が違う点には気をつけたいところです。入院や通院が続いた月は、領収書と保険者から届く通知を見比べておくと、申請を忘れにくくなるでしょう。
高額介護サービス費は市区町村から支給、医療と介護を合算する制度もある
介護保険法では、介護サービスの自己負担が著しく高額になったときに、市町村が高額介護サービス費を支給すると定められています。手続きの方法は、お住まいの市区町村で確かめておきましょう。介護の費用がかさんだ月は、利用明細や領収書を残しておくと、あとで確かめやすくなるでしょう。また、厚生労働省の「高額介護合算療養費制度について」によると、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間に、医療保険上の世帯単位で支払った医療保険と介護保険の自己負担を足し合わせ、決められた限度額を上回った分が支給される制度もあります。
年金生活では収入が限られるため、払い戻しを受けられるかどうかが家計に与える影響は大きいと考えられます。とくに医療と介護の両方を使っている世帯では、それぞれの払い戻しに加えて合算の制度も関係してくるため、1つの窓口だけで判断せず、医療保険と市区町村の両方に確かめておくと、見落としを減らしやすくなるでしょう。これからのマネープランを考えるときは、年金や給付金の振込に加えて、医療費や介護費の領収書を1年分まとめて保管し、申請できるものがないかを定期的に見直す習慣をつけておくと安心です。
まとめにかえて
まずは、日本年金機構から届いた年金生活者支援給付金の請求書(はがき)が手元に残っていないかを見ておきましょう。次に、条件に当てはまる人は、まだ出していないはがきがあれば、遅くとも令和9年1月4日までに日本年金機構へ届くよう、早めに出しておきましょう。そして、医療費や介護費の領収書を整理し、払い戻しを申請できるものがないかを加入している医療保険や市区町村に問い合わせておきましょう。
シニア向けの給付金や手当は、申請や届け出をしてはじめて受け取れるものが少なくありません。年末の家計を見直すときに、届いた書類と領収書を一度まとめて確かめておくと、受け取れるはずのお金を逃さずに、来年の暮らしの見通しも立てやすくなるのではないでしょうか。
参考資料
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金を受け取るためには手続きが必要ですか。」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金の振り込みはいつですか。」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金の金額はいくらですか。」
- 日本年金機構「令和8年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)の送付について」
- 日本年金機構「手続きが遅れると年金生活者支援給付金は受け取れなくなりますか。」
- 厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 日本年金機構「加給年金額を受けられるようになったとき」
- 日本年金機構「振替加算を受けられるようになったとき」
- 日本年金機構「事後的に生計維持関係の申告を行った方への振替加算に関するお知らせについて」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」
- e-Gov法令検索「介護保険法」
- 厚生労働省「高額介護合算療養費制度について」
元厚労省担当の専門紙の新聞記者。公的社会保障(年金・医療・介護)やNISA・iDeCoを横断分析。難解な一次データを生活者視点に翻訳し、知っておきたい家計防衛の知見と、安全で実用的な情報を提供。