【国民健康保険・後期高齢者医療制度】保護を受けると加入者から外れる
国民健康保険法では、生活保護を受けている世帯に属する人は、国民健康保険の加入者にしないと定めています。後期高齢者医療制度も、高齢者の医療の確保に関する法律で同じように定められています。
そのため、国民健康保険や後期高齢者医療制度に入っていた人は、保護が始まると加入者から外れます。保険料を納めることもなくなり、医療費は全額が医療扶助になります。
ただし、保護が「停止」されている世帯は、この決まりの対象外です。停止中は国民健康保険などに入ることになるため、保護の状況が変わったときは、市区町村の国民健康保険の窓口にも届け出ます。
筆者が元公務員として国民健康保険を担当していた頃も、保護の開始や終了にともなう資格の切り替えは、窓口で説明することの多い手続きでした。国民健康保険の資格がなくなると保険料は月割りで計算し直すため、納めすぎた分が戻ることもあります。
保護が終わったときも同じで、ほかの医療保険に入らない人は国民健康保険に入り直します。届出が遅れると、さかのぼって保険料を納めることになるので、早めに手続きをしておきたいところです。
【会社の健康保険】加入は続き、自己負担の分を医療扶助が負担
国民健康保険や後期高齢者医療制度と違い、会社の健康保険などの被用者保険は、生活保護を受けても加入が続きます。働いて健康保険に入っている本人だけでなく、その被扶養者も同じです。
この場合、医療費はまず健康保険から給付されます。厚生労働省の資料では、健康保険から給付されない部分が医療扶助の対象になると説明されています。
例)医療費が1万円かかった場合 生活保護を受けている人の医療費をだれが払うか
- 国民健康保険・後期高齢者医療制度だった人:医療保険から0円、医療扶助から1万円、窓口での支払いは原則0円
- 会社の健康保険の人(70歳未満・3割負担):健康保険から7000円、医療扶助から3000円、窓口での支払いは原則0円
70歳未満で窓口負担が3割の人なら、健康保険が7割を払い、残りの3割を医療扶助が負担します。医療費が1万円なら、健康保険から7000円、医療扶助から3000円という分け方です。
厚生労働省の資料によると、生活保護を受けている人のうち被用者保険に入っている人の割合は2.4%です。人数としては少ないものの、働きながら保護を受ける人などが当てはまります。
健康保険に入ったままの人は、保険証やマイナ保険証で受診しつつ、自己負担の分は医療扶助で手続きをすることになります。受診の前に福祉事務所に相談し、どの書類を使えばよいかを確かめておくと安心です。
まとめにかえて
2024年度の国民医療費のうち、生活保護法による医療費は1兆8542億円でした。生活保護を受けている人の医療費の多くは、医療扶助が支えています。
国民健康保険や後期高齢者医療制度の人は、保護を受けると加入者から外れ、医療費は全額が医療扶助になります。会社の健康保険の人は加入が続き、健康保険の自己負担の分を医療扶助が負担します。
どちらの場合も、受診の前に福祉事務所に相談するのが基本です。保険の手続きで迷ったら、国民健康保険なら市区町村の窓口、会社の健康保険なら勤務先や加入している健康保険組合などにも確かめてください。
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在は株式会社モニクルリサーチが運営する複数のWebメディアで年金・貯蓄・退職金等の情報を発信。