厚生労働省が2026年10月30日に公表した「令和6(2024)年度 国民医療費の概況」によると、2024年度の国民医療費は48兆8100億円でした。このうち生活保護法による医療費は1兆8542億円で、前年度より1.8%増えています。
生活保護を受けている人の医療費は、生活保護の「医療扶助」でまかなわれます。ただし、保護を受ける前に入っていた医療保険の種類によって、保険の扱いは変わります。
この記事では、国民医療費に表れた生活保護の医療費を確かめたうえで、国民健康保険・後期高齢者医療制度の人と、会社の健康保険の人とで何が違うのかを整理します。
※生活保護は、国が生活に困っているすべての国民に、困っている程度に応じて必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともに、自立を助けることを目的とした制度です(生活保護法第1条)。病気やけが、障害、高齢、失業、介護や子育てなど、受給に至る事情は一人ひとり異なります。本記事では、制度を必要とする方が安心して利用できるよう、制度の仕組み等をお伝えします
【国民医療費】生活保護法による医療費は2024年度に「1兆8542億円」
国民医療費は、医療機関などで病気やけがの治療にかかった費用を、年度ごとに推計した統計です。費用をだれが負担したかで分けると、医療保険や後期高齢者医療制度の給付のほかに、国や自治体が負担する「公費負担医療」があります。
生活保護法による医療費は、この公費負担医療の中でいちばん大きな額です。2024年度の公費負担医療は3兆4532億円で、その半分あまりを生活保護法による医療費が占めています。
国民医療費のうち生活保護法による医療費の推移(2020〜2024年度)
- 2020年度:国民医療費42兆9665億円、うち生活保護法1兆7423億円(4.1%)
- 2021年度:国民医療費45兆359億円、うち生活保護法1兆7388億円(3.9%)
- 2022年度:国民医療費46兆6967億円、うち生活保護法1兆7425億円(3.7%)
- 2023年度:国民医療費48兆915億円、うち生活保護法1兆8217億円(3.8%)
- 2024年度:国民医療費48兆8100億円、うち生活保護法1兆8542億円(3.8%)
5年間で見ると、生活保護法による医療費は1兆7000億円台から1兆8000億円台に増えました。国民医療費全体に占める割合は、4%前後で推移しています。
では、医療扶助はどれくらいの人が使っているのでしょうか。厚生労働省が2024年度の被保護者調査をもとに集計した資料では、医療扶助を受けた人は170万6367人で、生活保護を受けている人の85.0%にあたります。
生活保護を受けている人の多くが、通院や入院で医療扶助を使っていることが分かります。次の章では、医療扶助がどのような仕組みで支払われるのかを見ていきます。
生活保護の医療費は「医療扶助」で原則として窓口負担なし
生活保護には8つの扶助があり、暮らしに必要な費用の種類ごとに分かれています。医療扶助はその1つで、診察や薬、入院などの費用が対象です。
- 生活扶助:食費や光熱水費など日常の暮らしの費用
- 住宅扶助:家賃など
- 教育扶助:義務教育に必要な学用品など
- 医療扶助:診察や薬、入院など医療の費用
- 介護扶助:介護サービスの費用
- 出産扶助:出産の費用
- 生業扶助:仕事に就くための技能の習得などの費用
- 葬祭扶助:葬儀の費用
生活扶助などがお金で支給されるのに対し、医療扶助は原則として「現物給付」です。生活保護法の指定を受けた医療機関で診療を受け、費用は医療機関に直接支払われます。
受診するときは、福祉事務所が発行する「医療券」を使うのが従来の流れです。2024年3月からは、マイナンバーカードを使った医療扶助のオンライン資格確認も始まりました。
医療扶助を出すかどうかは、福祉事務所が医師の意見などをもとに必要性を判断して決めます。たとえば兵庫県西宮市の案内でも、「要否意見書」に基づいて福祉事務所長が給付を決めると説明されています。
厚生労働省の資料では、生活保護を受けている人の多くは自己負担がなく、医療費の全額を医療扶助で負担しているとされています。全額が医療扶助になる理由は、多くの人が国民健康保険や後期高齢者医療制度から外れているためです。
一方で、全額が医療扶助にならない人もいます。それが、会社の健康保険に入ったまま保護を受けている人です。
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在は株式会社モニクルリサーチが運営する複数のWebメディアで年金・貯蓄・退職金等の情報を発信。